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HAI-FES国際ワークショップの開催報告

 世界全体の4倍の速さで温暖化が進行している北極域は、深刻な環境変化と社会変化に直面しています。その課題解決のためには、自然科学・人文社会科学・工農医学の連携・融合(Interdisciplinary Research)や社会の様々やステークホルダーとの超学際的な連携・協働(Trans-disciplinary Research)を通して、環境変化のリスクを回避・軽減するための知を共有し、持続可能な社会への転換を促進し、人新世に相応しい総合的な”知”を形成する必要があります。企画したワークショップでは特に北極域において課題解決型のプロジェクトや研究を推進している研究者を北大に招き、本学の同様な研究者ととともに、それぞれの活動や計画を紹介してもらい、それらを推進する上で遭遇した問題点、障壁、その対処・解決方法を共有しました。
 このワークショップは2023年3月13日10:30-18:00において、対面とオンラインの両方で行いました。内容はオープニングセッションとセッション1~3から成り立っており、オープニングでは、基調講演として総合地球環境学研究所の前所長である安成哲三先生に「How “Science for Society” should be developed」と題してご講演いただきました。Session1では当センターの平田准教授の司会で、アラスカ大のHajo Eicken氏、水産科学院の綿貫豊氏、トロムソ大(ノルウェー)のAileen Espiritu氏、ナンセンリモートセンシングセンター(ノルウェー)のStein Sandven氏にご講演いただき、北極域研究におけるNetworking の重要性について議論した。Session2では、当センターの宇都教授が司会をし、当センターの安成准教授、水産科学院の大槻真友子氏、JAMSTECの斉藤和之氏が現在取り組んでいるプロジェクトについて発表し、超学際研究の難しさについて議論しました。また、セッション3では当センターの大西准教授がモデレータとなり、Aileen Espiritu氏、Hajo Eicken氏、東北大の石井香織氏が、北極研究の倫理的な実施について議論しました。
 参加者は会場に26人、オンラインで最大22人が参加した。北極域研究におけるネットワーク形成を目指すための基盤的な議論ができました。対面とオンラインの両方でやるハイブリッドでの運営は今回のHUCI資金で業者に任せることができたので、大きなトラブルもなく、質の高い運営ができました。
安成氏の基調講演では、「社会のための科学」が如何に大事か、それを実施するためにあるべき態度、等貴重な示唆に富んだお話をしていただきました。Session1では、Networkingの例を各講演者が発表し、Networkingの大切さを改めて確認しました。Session2では、最近の超学際的な取り組みの例を紹介してもらい、社会とかかわりのある研究の大切さおよび難しさを共有できました。また、Session3では、北極域で研究を行う場合のコミューニティと関わり方についての知見を得ることができました。