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目的、目標

温暖化が急速に進む北極域では、環境の変化だけでなく人間社会への影響が生じており、その影響は北極圏外の自然環境や社会に及びつつある。このため、環境変化の実態を把握し、社会・経済的影響に対する解決策・適応策・緩和策を見出すことが、国際的に急務の課題となっている。本事業は、

  • 北極域研究センター、工学研究院、地球環境科学研究院、理学研究院、スラブ・ユーラシア研究センターの研究力を融合すると共に、国内の産学官連携ネットワークを強化し、国際連携研究拠点として海外研究機関と共に「フューチャー・アース(FE)グローバル北極域ネットワーク(Future Earth Global Arctic-Net, FEGA-Net)」を立ち上げて、国連SDGsに貢献する課題解決型研究を推進する。
  • FEGA-Netでは世界の学術的知見の集積を目指し、変化しつつある自然環境の実態とその変動メカニズムの解明(目標①)、北極域のニーズに対応する持続可能性についての研究(目標②)、変化に直面する社会・経済の持続的発展のための政策の提言(目標③)に取り組む。
  • 本事業の枠組みと成果をもって、第3期中期計画中に予定されている大学院環境科学院の北極域研究センターの参画を含めた改組を通じ、 北極分野において活躍できる人材の継続的な育成に繫げることを目標としている。

必要性・緊急性

内閣府は我が国の北極政策を策定し(2015年)、第3期海洋基本計画(2018年閣議決定)では、主要施策の一つに北極政策推進を位置づけた。同年には河野外相がアイスランドでの国際シンポジウムにおいて、北極の科学研究推進など我が国の北極政策に関する基調講演を行った。また柴山文科相は、第2回北極科学大臣会合(ドイツ)において、『北極域研究推進プロジェクトArCS』を紹介し、第3回会合(2020年)を我が国に誘致した。2019年には、安倍首相が北極の研究開発の加速を指示するなど、精力的に北極外交を展開している。

こうした中、北極域の課題解決への取り組み、日本の北極政策実現、北極域社会への国際貢献、国連が掲げる持続可能な開発目標 (SDGs) の実現は、喫緊の課題となっている。これを実現するためには、基礎的研究・観測研究を主体とするArCSや科学研究費研究の枠組みを超えて、課題解決を目指す総合的な北極域研究及びそのサポートとなる国際的基盤の構築が不可欠である。これを目指す本事業により、我が国が表明する北極域への貢献について強いコミットメントが実現される。

全体計画

(令和2年度:実績)

  • 北極圏及び北日本地域へのPM2.5センサー設置準備、永久凍土及び森林生態系調査準備、北極小規模コミュニティの廃棄物・汚染処理調査準備。都市気象データ収集。
  • ベーリング海の海洋生態系変動解析及び海氷域観測準備。海氷の実態把握手法検討。
  • 学術的知見・在来知・伝統的知識の融合、産学官パートナーシップでの課題分析。

(令和3年度)

  • PM2.5センサー設置、COVID-19流行下の大気汚染変化の分析、温暖化・火災による凍土への影響分析、海洋生態系解析、海氷状況検出、北極域小規模コミュニティ社会のフィールド調査。
  • FEGA-Netの国際連携基盤構築、国際ワークショップ開催と国際連携研究企画。

(令和4年度)

  • PM2.5時空間変動および北極海洋生態系の解析、破棄物処理フロー、船の航行リスクの評価。
  • FEGA-Netにて、現地コミュニティとの課題解決型研究国際ワークショップを開催。

(令和5年度)

  • 広域大気汚染情報基盤構築、海洋生態系変化と社会影響、建物の温暖化対策手法評価。
  • FEGA-Netにて、超学際的研究国際ワークショップを開催。

(令和6年度)

  • 政策決定者・企業・地域住民に向けたレポート作成。研究成果の社会実測を図るシンポジウム開催。

期待される成果

【研究・教育】

  • 全学的な異分野連携により、北極域研究を国際的に先導する「総合的な北極域研究拠点」を構築し、研究領域拡大を実現することで本学の機能強化に貢献する。
  • 内外の産学官及び現地コミュニティ等との共同研究を通じ、北極域への産業参入機会創出や国際北極ガバナンス機関への政策提言に繋げると共に、国際共同研究の拡大と国際共著論文比率の押し上げ、 国際シンポジウム等開催による成果公開と連携拡大。
  • 環境科学院におけるコース新設による継続的な北極分野の人材育成基盤の形成。

【社会貢献】

  • 世界初となるフューチャー・アース・グローバル北極域ネットワーク構築を通じ、北極域問題の国際的認知度の向上、最新の研究成果・先端技術と北極における課題のマッチング窓口形成、 国際的北極ガバナンス機関への継続的な提言を実現。
  • 産学官連携ネットワークの強化を通じ、北極域の持続的利用のための課題を詳細に網羅したレポートの作成・提供、新たな共同・受託研究の創出と実施を実現する。