北極域研究センター研究助成
採択者・報告書等
2025年度 採択者
古屋 正人
所属機関:北海道大学大学院
研究課題名:地盤変動のリモートセンシングによる森林火災跡地域における永久凍土の後退と回復過程の解明
報告書:
北半球の高緯度域は「連続凍土帯」に位置しており、地表から約1メートル以深には永久凍土が分布しています。凍土の中には大気中の炭素の倍以上にあたる有機炭素が封じ込められていると言われ、凍土の融解に伴うその大気中への再放出は更なる温暖化の加速を招く可能性が懸念されています。凍土の融解は温暖化の進行によってゆっくりと進むことに加えて、地表面の擾乱によって突発的かつ急速に進む場合もあります。特に森林火災はその代表的要因であり、温暖化によって森林火災そのものの頻度や規模も上昇傾向にあると報告されています。そのため森林火災による凍土の融解が実際どのくらいの速度で進むのかを調べることは重要ですが、従来は定量的な評価が殆ど進んでいませんでした。
本研究は北西カナダのユーコン準州で過去50年に渡って発生した森林火災跡地での地盤変動を人工衛星で得られるレーダー画像の解析によって調べました。レーダー画像データは最近10年程度で得られたものですが、画像の中にはさまざまな年代の火災跡地が含まれているため、火災後の地盤変動を調べることによって、数10年スケールで永久凍土がどのように融解し、回復するかを調べることが出来ます。図には1986年、2004年、2017年の火災跡地と非火災跡地(左)での2017年以降の地盤変動(右)が示されています。2017年火災跡は急激に沈降しているのに対し、2004年火災跡ではゆっくりと隆起しており、前者では融解が進み、後者では凍土の回復が強く示唆されます。この一連の過程は地表植生の消失と回復に支配されていると考えられます。また、1986年火災跡ではほぼ安定しているように見えますが、非火災跡ではゆっくりとした沈降も示されています。







