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当センターの齊藤誠一研究員が日本海洋学会宇田賞を受賞しました

  • 2022.9.12

2022年9月5日に名古屋大学で開催された日本海洋学会秋季大会で齊藤誠一研究員(北大名誉教授、前センター長)が2022年度日本海洋学会宇田賞を受賞しました。受賞対象業績は「衛星リモートセンシングを利用した海洋研究と北極域研究の推進」です。宇田賞は顕著な学術業績を挙げた研究グループのリーダー、教育・啓発や研究支援において功績のあった者など、海洋学の発展に大きく貢献した学会員の中から選考されています。水産海洋学会にも同じタイトルの宇田賞(水産海洋学会賞)があり、齊藤研究員は2014年にこの宇田賞も受賞し、2度目の宇田賞となっています。彼の手元には宇田賞ゆかりの宇田道隆先生の顔がレリーフされたメダルを2個手元に持つことになりました。

受賞理由は以下の通りです。

 齊藤誠一会員は,海洋衛星リモートセンシングの分野において,その発展に多大な貢献を果たしてきた.齊藤会員は衛星リモートセンシングを利用した海洋研究やその応用研究に関する多数のプロジェクトを牽引し,多くの研究計画で代表者を務めた.また,衛星データを,現場観測による実測データや数値予測モデルデータと統合して配信するサービスを開始し,水産業等への実利用をはじめとした海洋衛星リモートセンシングの社会実装にも大きく寄与している点は特筆される.これらの研究や先駆的活動は,多くの日本人学生と留学生を惹きつけ,齊藤会員が指導した多数の優秀な人材は,現在国内外の海洋学・衛星リモートセンシングに関する教育・研究機関,及び関連団体・企業で活躍している.
 一方,齊藤会員は,北極域研究における貢献も極めて大きい.急激な海氷減少により北極域が注目される以前から,アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター及び宇宙航空研究開発機構との共同研究を開始し,10年以上に渡って北極域における衛星海洋学的研究やモニタリング研究を推進した.また,2013年からは,ESSAS(Ecosystem Studies of Sub-Arctic and Arctic Seas)の共同議長を6年間務めた.さらに,2015年4月に設立された北海道大学北極域研究センターの初代センター長として,組織の基盤を構築するとともに,我が国の北極域研究のナショナルフラッグシッププロジェクトである北極域研究推進プロジェクト(ArCS)のサブプロジェクトディレクターとして,研究を統括・推進した.ArCSでは海外若手派遣支援プログラムの実施責任者も務め,日本海洋学会の学生・若手会員を多数海外に派遣した.さらに,北極域研究共同推進拠点の本部長として,研究者コミュニティ支援や産学官連携の推進等の重要な役割を果たした.
 齊藤会員は,2021年にロイター社が発表した「世界で最も影響力のある環境科学者1000人」に選ばれたが,これも齊藤会員が多くの院生や共同研究者とともに,気候変動に対する海洋生態系の応答の研究や,衛星を用いた海洋環境のモニタリングに関して大きな貢献をしたことが評価されたためと考えられる.
 以上のように,齊藤会員は衛星リモートセンシングをベースとした海洋研究の発展と衛星データの社会的利用の促進に大きく寄与するとともに,北極域に関する海洋研究の推進にも多大な貢献を果たしてきた.これらの功績は,日本海洋学会宇田賞にふさわしいものであり,齊藤誠一会員を受賞候補者として推薦する.