新着情報:中央北極海における無規制公海漁業防止協定草案に合意


 2017年11月28-30日にかけて、北極沿岸5か国(カナダ、デンマーク、ノルウェー、ロシア、米国)と漁業4大国(日本、中国、韓国、アイスランド)とEU(欧州連合)の代表がワシントンD.C.にて交渉を行い、中央北極海における無規制公海漁業防止協定(Agreement to Prevent Unregulated High Seas Fisheries in the Central Arctic Ocean)の基本文書に合意した。同協定は、これから調印、そして、発効手続きが行われる。同協定が発効すれば、約280万平方キロメートルに該当する北極海の中央公海部分における無規制な商業漁業が事実上禁止されることとなる。

 これまで北極海の中央部分における商業漁業は存在しておらず、漁業資源が存在するかどうかについても科学的に解明されていない。こうした中で、今回の協定が成立したのは、温暖化に伴う近年の北極海海氷の著しい減少と、それによって見込まれる周辺漁業資源の北上に対して、予防原則の観点から先手を打つという考えが働いたものである。

 同協定の政府間交渉は、2015年7月に北極海沿岸5か国が2015年7月に「中央北極海における無規制公海漁業の防止に関する宣言」で合意して以降、米オバマ政権の強い働きかけにより、同5か国に漁業大国を含めて進められてきた。政府間交渉に並行する形で、中央北極海漁業資源科学者委員会も立ち上げられ、政府間交渉の科学的知見を提供してきた。

 今回の協定合意案での目玉は、科学研究モニタリング共同作業部会を設置し、同作業部会が中央北極海の生態系の理解の向上、とくに漁業資源を監督するという任務が与えられたことである。これは、国際法の観点から見て、将来、中央北極海における地域的漁業委員会の設立に道を開くものである。また、国際政治においても、この協定の成立は、ポスト冷戦期に成立した北極協調体制が再編されていく大きな転換点の1つとなり得る出来事であり、極めて画期的である。

 小職は、平成28年度北極域研究共同推進拠点事業の共同研究として2016年12月16-18日にかけて北大北極域研究センターで「中央北極海における国際科学協力に関する研究集会」を開催し、当時進行中であった中央北極海における無規制商業漁業の防止に関する政府間交渉(米国、カナダ、ノルウェー、デンマーク、ロシア、日本、韓国、中国、EU、アイスランド)を念頭におきつつ、科学者のレベルで、より公平で環境保全を重視した科学的機関の設置の検討を促す提言書を取りまとめ、関係国の政策決定者たちに配布してきた。

 今回の協定合意案にある科学研究モニタリング共同作業部会の詳細はまだ明らかとなっていないが、研究集会での提言書の中の最も大切な提案が反映される形での協定案で合意が成立したことに感無量である。特に本研究会の海外カウンターパートであり、この問題に数年来取り組んできたカナダのクウィーンズ大学の友人ピーター・ハリソン氏に感謝し、本プロジェクトに関わった全ての方々と共に祝杯を挙げたい。
(文責:大西富士夫 2017年12月1日)

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